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ペルシャ絨毯の産地

産地

イスファハン
イスファハーン
エスファハン
Isfahan
Esfahan
イスファハンはイランの中央に位置するイスファハン州と州都の名前で す。首都テヘランからは直線距離で約400km、飛行機で約40分の場所です。現在で はイラン第二の都市になります。かつて17世紀、シャー・アッバスの治世にはペルシャ帝国の都であり、 当時は「イスファハンは世界の半分」とまでいわれたといいます。 今でも当時の遺構や見事な文化が後世に残した町並み産物からその繁栄ぶりを伺わせます。

イスファハン絨毯の特徴...
ペルシャ絨毯の中でも、古都イスファハンで織られた絨毯は、 品質、デザインとも最高級の物と言われます。 パイルの素材は稀に全てシルクの物もありますが、 ほとんどがウールもしくは部分的にシルクを用いたものです。 中でもコルクウールと呼ばれる子羊の毛は細くしなやかで程よい弾力を持ち、 これで織られた細やかな毛並みは、使うほどにしっとりとした風合いを増します。 今のイスファハンでは、織り目の細かさ、正確さとその精密な織りを生かした 伝統的な曲線を基調とした優美なデザインの絨毯が、高い技術を持った工房によって生産されています。 目の細かさを実現するためそのほとんどは縦糸として細く丈夫なシルク糸を用い、 横糸にはよく締まり強度と柔軟さを備えた綿が多く使われています。 高い密度に結ばれ、打ち込まれたパイルは、柄をはっきり見せるように短くカットされ、 全体として薄い仕上げになっており、構造的にも頑丈で、表面の摩耗にも強く、 塵や水分も入り込みにくいものとなっています。 日本ではシルクの絨毯が比較的多く好まれますが、屋内を靴て過ごす欧米ではウールが基本で、 その中でイスファハンの良品は実用的な高級品とされているようです。

工房...
有名な工房、デザイナーとしてはハギギ<Haghighi>、セーラフィアン<Seirafian>、 ダルダシティ<Dardashti>、ヘクマトネジャド<Hekmatnajad>、ダーバリィ、ドッリィ、ガッファリアン、など。

完成された意匠...
デザインはいわゆるシャー・アッバス・メダリオン・コーナーと呼ばれる伝統的な柄がよく作られます。 これは、絨毯の中央に周囲を幾条にも分けたメダリオンを置き、 その周囲のフィールドに多分に具象的に描かれた鳥や花、 あるいはモチーフとしての花であるパルメットやロゼット、 およびアラベスクと呼ばれる蔓のパターンを配し、 その周りをフレーム状にボーダーが幾重にか囲み、 ボーダーの内側の四隅には中央のメダリオンの一部に類似したデザインが置かれるというものです。 他に、総柄や動植物などのミニアチュールデザインも作られます。
カシャン / カシャーン / Kashan
カシャンの町...
イラン中央部のイスファハン州の町で、テヘランから直線距離で南へ約170km。 テヘランとイスファハンの中間で標高はおよそ1, 600 m、カビール砂漠の西方に位置し、 夏は極度に暑く乾燥した土漠地域です。町の歴史は長く、遺跡も多数見られます。 古くから工芸の町としてタイルなど陶器や金属製品、絹織物の生産を行い広くその名は知られていました。 イランの国の花である薔薇の産地としても有名で、ローズウオーターも特産品の一つです。 現代では、絨毯産地として高い技術を維持し、イラン国内に於いても他の産地から一目置かれる存在です。

カシャンの絨毯...
シャーアッバスの時代に絨毯の制作に於いて発展、頂点を極めた。 現在、カシャンの絨毯はイラン国内での人気も高く、糸の太めな実用品クラスの物が多く作られ 一般の家庭でもよく使われています。 生産される殆どの絨毯はウールの製品ですが、シルクの絨毯の生産も行われています。 シルクの絨毯と言えばクム産が有名で、数も圧倒的に多く出回っています。斬新なデザインでは比べるべくも無いのですが、カシャンのシルク絨毯は高い技術と 良質のシルクで伝統柄を顕わし、クムを上回る品質の物を数多く産み出しています。

伝統柄...
デザインは中央にメダリオンを配し、周りのフィールド部に花や葉などをあしらった、メダリオンコーナーデザインで、 アイボリー系のものと赤系のものがカシャンの伝統柄としてよく見られます。 メダリオン柄以外の物でも、絵画や肖像を描いたものなどが織られています。 奇をてらった文様や外国人の嗜好におもねるような図柄は少なく、伝統的なデザインを 確かな織りの技術で生産する産地です。

高い技術...
材質には、上質なものではコルクウール<Kurk Wool> と呼ばれる仔羊の首から胸元にかけてのしなやかな良質な羊毛を用います。 また、文様の縁に絹を使用し、輪郭を際立たせたものもあります。 カシャンの技術は高く、国内外でのカシャンの技術、デザインの移植が行われる為、 カシャンの柄を作る産地も国内外に数多く存在します。
タブリーズ / Tabriz
タブリーズの町...
イラン北西部、トルコ、ヨーロッパと地理的にも文化的にも関係の深い農業と商工の活発な都市です。 絨毯産業に関しても産業として発達しており、織り手も男性が多く、道具を用いた手結び法を用いるなど効率的な生産、さらに市場の要求に合わせた色柄の絨毯 の供給などをしています。 絨毯に関わる歴史も古く、一時衰退したペルシャ絨毯の復興も19世紀にこのタブリーズから始まりました。 東西を繋ぐ要衝であったため、歴史的にもきわめて重要な位置を占めかつてはアゼルバイジャンの首都やモンゴルが世界を席巻した時代にはその構成国の一つで あるイル・ハーン国の首都になった事もありました。

タブリーズ絨毯の特徴...
コーカサス系の直線を基調とした幾何学文様の絨毯や、ヘラティ、絵画、肖像など多岐にわたるデザインが見られます。 市場の需要にも敏感で、実用的なもの、 装飾的なものと商品バラエティを様々に取り揃えています。 タブリーズ絨毯の基本はウール絨毯ですが、多くは部分的にシルクを用います。 経糸、緯糸には木綿を用い、多くはトルコ結びが用いられます。 タブリーズでは、鉤針様の道具を用いて、緻密で目の詰まった絨毯を織り、比較的早く織ると言われています。
ナイン / ナイーン / Naein / Nein / Nain...
ナインの町...
イラン中央部のイスファハン州の町で、イスファハンの町から東へ約150km程に位置する、 カビール砂漠の中の小さなオアシスタウンです。 以前はイランの伝統的な衣類の産地でしたが、ヨーロッパ製品のイラン進出を機に、 カシャンや、多くはイスファハンの職人の指導を得て、 1920年ごろから本格的に絨毯産業が盛んになりました。 ハビビアン、ムフィディ、ソルタニ、ハギギ、ドラクシェス、 と言った工房を中心に主に輸出品としての高品質な絨毯生産を行っています。 イスファハンなどと並び、大産地の一つに数えられています。

ナインのデザイン...
デザインでは、イスファハンの影響が強く、いわゆるシャーアッバスメダリオンコーナー <shah abbasi and islimi medallion-and-corner >と呼ばれるデザインが多く見られます。 このデザインはアラベスク(唐草文様)や、花を意匠化したパルメットなど曲線を丁寧に細かく描くため、 高い織りの技術を要求されます。 同じ新興の絨毯産地であるクムとは反対に正統派好みの落ち着いた古典的なデザインを採用する事が多いです。 伝統柄を用いる中にもベージュとブルー系を基調とした抑制された配色を産地の統一した特徴として確立し、 均等な品質から洗練された絨毯というイメージが浸透しています。 落ち着いた色使いと丁寧な仕事の仕上がりは和室の使用にも相性が良く、日本でも人気のある産地の一つです。

品質...
材質には、上質なものではコルクウール<Kurk Wool>と呼ばれる仔羊の首から胸元にかけてのしなやかな良質な羊毛を用い、 きめ細くソフトな絨毯に仕上がります。 上質なものではまた、文様の縁に絹を使用し、輪郭を際立たせています。 主に、「シシラ(6laa)」或は「6本」と呼ばれ比較的織りの細かいグレードの物と、 「ノーラ(9laa)」或は「9本」と呼ばれる比較的織りの粗い2つのグレードの物が多く作られます。 このグレードはナインの絨毯のグレードを表す際によく用いられ、経糸に使う綿の撚り糸の数を表します。 少ないほうが一本の糸として細い糸を使うことになり、より密度を高めた表現が出来るという訳です。 ほとんど見ることはありませんが、「チャハラ(4laa)」、「4本」と呼ばれる大変細い縦糸を用いた、 実用品と言うよりは美術工芸品的な、精密な織りの絨毯もあります。 実用品としては、およそ40ラージから80ラージのシシラ、ノーラの生産が多いです。

コピー品も...
後進の産地ではありますが、そのレベル高さの為に世界中で評価され需要が高まった為、イラン国内のみならず、 国外にもコピー産地が存在し、世界中でナインの名称で取り引きされる事もあるようです。 しかし、コピー産地の製品はまだレベルが低く、ペルシャ絨毯を扱う人ならば区別が付くものが多いです。
クム / ゴム / Qum / Ghom
クムの町...
Qum、クムは、

首都テヘランから南西へ120km、テヘラン州にある町です。
イスファハンが日本の京都に例えられるとすると、
クムは奈良のようだとも言われます。
古代はゾロアスター教の聖地、9世紀以降は、
イスラム教の十二イマーム派の中心の聖地になりました、
モスク、神学校も多く、僧侶や巡礼の旅行者が多い町です。


絨毯産地としての歴史はまだ100年弱と浅いものです。
当初はウールカーペットを多く作っていましたが、
やがてパートシルク、の物が増え、
現在は、縦糸にもシルクを用いた精緻なデザインの オールシルクカーペットの産地として大変有名です。

他の産地の特徴的なデザインを繊細な絹の素材で新しく蘇らせたり、
常に新しいデザインを工夫している大変勢いのある産地です。
現在でも少量ですが、ウールの絨毯も生産されています。

クムでは多くの工房が素材を厳選し、デザインに磨きをかけています。
技術、センスのある織り手の獲得も重要で、
貴重な織り手の所在は家族にまで隠す事もあると言います。
ギャッベ / ギャベ / Gabbeh
ギャッベとは...
ギャベ<Gabbeh>は、ペルシャ語でパイルを短く刈り込んでいない敷物を指す言葉です。 粗いを意味する言葉からの派生語の様です。 イラン南部のファース地方の遊牧民、カシュガイ族やルリ族の女性たちによって主に自分達で使う生活の道具としてつくられて来ました。 以前はあまりに素朴な物であったためイラン国内でも絨毯としての取引の対象とはならず、殆ど流通していませんでした。 染色されない羊毛の濃淡を使い分けてデザインされた物も作られ、オフホワイトからダークブラウンの色使いのプレーンギャッベは欧米でも一部のコレクターな どにしか知られていませんでした。

ふかふかの使いごこち...
ギャッベのパイルはふかふかです。ギャッベのパイルはとても分厚いのです。一般的に15mm〜25mm程あります。他のペルシャ絨毯の場合、厚い物でも 15mmくらいなものです。さらにパイル1本いっぽんの太さも太いのです。細かさを表現上の必要条件とする他のペルシャ絨毯の努力をどこ吹く風とばかりの おおらかさです。小さいギャッベをお求めになったお客さまが、何日か経って、次に大きめのサイズをお求めに見える事がしばしばあります。「今度は昼寝がし たいから...」と仰るのです。

洗練されたギャッベ...
イランのゾランヴァリ社<Zollanvari>はカシュガイ族と共に素材、染色、織り、仕上げと全ての工程での品質管理を進め、洗練されたギャッベのブ ランドを築きました。1980年代にドイツ、スイスなどヨーロッパで非常に評価され、その頃日本にも紹介され始めました。 ゾランヴァリギャッベの特徴は、素材、染色にこだわり、他のギャッベより比較的目が細かく、そのため柄も細かく、パイルもやや短めですっきりとした印象が あります。

ギャッベは自由に織られます...

ゾランヴァリ社が広くギャッベを紹介して以降、カシュガイ族の女性たちは出荷用のギャッベを盛んに織るようになりました。 羊を牧し、毛を刈り、手で糸を紡ぐ。採取した草木で染め(最近では化学染料も平行して使用されることもあるようです?)、機を組み立て織る(ギャッベは水 平機で織られます、これは移動を常とする遊牧民が、すぐにそして容易に組み立てられることが必要な為です。)・・・・・一族の遊牧生活の全てから素朴な ギャッベは生まれます。カシュガイ族の素朴なギャッベの特徴は比較的粗く、厚く結ばれたパイルです。デザインは非対称や幾何学的、象徴的であったり、具象 的な身近な動植物をモチーフにしたり、物語の場面の描写や景色のようであったりと様々です。もともと下絵も存在せず、思い浮かぶままに自由に織っていくと 言われます。描かれる素朴な人物、動植物の図柄は、私たちにゆったりとした牧歌的な気分を味わせてくれます。 また毛足の長い所から、手触り、ふみ心地の良さも魅力です。

ギャッベは人気があります
ギャッベが持ついろいろな面での優しさに加え、現代的なインテリアにも違和感なく使え、織り、柄の緻密さを求めない為に比較的安価であるなどギャッベは大 変に人気があります。いま、トルコ、インド、中国及びエジプトなどではギャッベを似せた物が作られ安価に市場に出荷されています。羊毛の質、染め、織り、 どれをとってもまだ本家イランのギャッベには及びません。ご購入の際には注意が必要です。 また、ゾランヴァリのギャッベを意識したものも作られています。これはカシュガイ族のものもイラン国内外の産地のものもありますが、あまりに意識し過ぎて 緻密にし過ぎたり、パイルも短くカットし過ぎたものなど、もはやギャッベと言い難い物もあったりします。

ギャッベの産地
多くのガシュガイ族のギャッベは、ほかのカシュガイ族の作る絨毯、キリムと同様に一大集積地であるシラーズに集められ、世界へ送り出されていきます。 そのため産地の表記はほとんどシラーズとなっています。
キリム/ゲリム/ゲリーム / Kilim
キリムはもともと...
キリムはもともと羊などと共に移動して暮らす遊牧民が作った平織り技法の織物のことです。 呼び方はイランではゲリーム、トルコではキリムと呼ばれます。他の地域でも呼び方がいろいろとあるようです。 日本では先にトルコの物が普及した為なのでしょうか?区別せずキリムと呼ぶ事が多いです。 また、トルコ産のキリムとペルシャ産の綴れ織りのゲリームの見かけがよく似ているのでわざわざ呼び分けるのが難しかったのかもしれません。 ここでは日本で一般的によく使われる「キリム」を使います。 織り手はほとんどは女性です。素材には、羊、ヤギ、ラクダなどの毛が使われます。ペルシャのキリムには、民族や地方によって様々な特有の文様があります。 それぞれ織り手の願いが込められており、幸せな結婚・子孫繁栄・ 豊穣の祈りなどを表しています。

キリムの絨毯...
もともとキリムには絨毯の様な主要産地や大規模な工房はありませんでした。 今でこそキリムはイランやトルコ以外の国々へ沢山供給され、専門の工房などもありますが、初め市場では絨毯のように主要な産物とは見なされていませんでし た。 その事が、キリムの文様が変わらず素朴で民族に固有なものとして受け継がれた理由でもあるようです。 キリムはパイル絨毯と比べて主要な輸出品でなかったゆえに海外などの市場の圧力でデザインを変える必要がなかったのです。
ヤズド<YAZD>
ヤズドは、近年カシャンの影響が強く、典型的なカシャンの柄を織る産地 として知られています。中心に単一のメダリオンを持ち、フィールドをシャーアッバスのパルメットで飾った伝統的なメダリオンコーナーのデザインが多く作ら れています。 小さいメダリオンが複数配置された柄のものなどもありますが、非常に稀です。 色使いはシンプルで、同じようなデザインでアイボリー/ベージュ系のものと赤系の2種類が主なものです。 経糸には普通綿が使われ、横糸には青い綿の糸を使う事が多く、裏側から見ると全体がやや青っぽく見えます。 パイルの素材はウールで、比較的厚めです。結びは、ペルシャ結びで、目の細かさは30ラージぐらいが平均です。 古いアンティークでは60〜80ラージのものもあるようですが、市場ではあまり見られません。 必ずしも目は細かくはありませんが、織りの仕事は良質で耐久性もあり、実用的によく踏む場所に大変適した絨毯であると言えます。 サイズは様々な大きさが作られますが、多くはドザールから2x3mのサイズです。

ヤズドの町は非常に歴史のある古い町です。地理的にも主要な中央アジアやインドへのキャラバンルート上の町として栄えました。 テヘラン<Tehran> から南東へ約700km弱、大産地で有名なナインより南東へ百数十km、イランのほぼど真ん中と言える位置にあり、この地域では最も大きく、重要な都市で す。 地理的に、カビール砂漠、ルート砂漠に南と西を臨み、熱風と強烈な陽射しが典型的な砂漠都市です。 7つの地区と、1つの市から成り、それぞれいくつかの村に分けられます。これらの地区にはアルダカンも含まれ、同じカシャンのデザインの絨毯の産地として 知られています。 地下にはカナートと呼ばれる「地下道の水路」がたくさん張り巡らされており、ベージュの日干し煉瓦の家々が迷路の小路を作り出し、ところどころバードギー ル(風採り塔)がそびえ立つ町です。その町並みの美しさから、イランでは「砂漠の花嫁」と呼ばれています。窯業や金属製品の生産もさかんで、織物の町とし ても有名です。 またヤズドは、7世紀以降のイスラム侵入の後、イランの国教でもあったゾロアスター教の信者が最後まで多く暮らした町です。現在でもイランのゾロアスター 教徒の中心です。6月になると世界中のゾロアスター教徒が、ヤズドから72km離れたチャクチャク神殿に集まります。 ヤズドのゾロアスター教の寺院では今も1,000年絶やされず続くという、聖なる火がともされています。ゾロアスター教信者の人々は、イスラム教徒の一般 イラン人からみれば 異教徒であるにもかかわらず、その誠実な生活態度から商取引においても信頼できるという評判を得ています。
ケルマン<Kerman>
ケルマンはイランの南東部、ルート砂漠の西端、標高約1800mに位置 する 古くからある町で、16世紀サファビー朝シャーイスマイルの時代には、ショールや刺繍等の織物産業と共に絨毯も作られ、王室工房も存在していました。19 世紀後半からは、絨毯が産業の主流となり、特に近郊の村ラバー<Lavar>で作られた絨毯はケルマンラバー<Lavar Kerman>として有名です。ケルマンの絨緞は、糸を紡ぐ前に羊毛を染める「先染め」の染色法を用いてい ます。 色が深く、均等にしみ込むため、長い年月が経ち、洗いを重ねていきますと 更に落ち着いた色調に至ります。 古くなればなる程、深みのある美しい絨毯になると言 われています。
アルデビル<Ardebil>
アルデビルは、テヘランから飛行機で一時間ちょっとの海抜1000メー トルを越える高原都市でその歴史も古く、一時期アゼルバイジャン地方の首都であった町です。その町と周辺で産する絨毯は幾何学文様が多く、また総柄のマヒ (魚)デザインも多く作られています。
ハマダン<Hamedan>
クムの町から東へ180km、標高2,000mほどの高原にあり、 夏快適な気候の観光地です。 町の歴史は古く、紀元前600年頃メディヤの首都エクバタナとして繁栄しましたが、その後アケメネス朝となり夏の首都として繁栄しました。旧約聖書「エス テル記」の舞台になったともいわれ、エステルとモルデカイの廟があります。歴史的に異民族の侵略が多くあり、トルコ系の住民が多く住んでいます。ハマダン の絨毯は産地というよりは集積地としての重要性の方が高く、絨毯はハマダン平野にある数百の村々で作られているものが集まっています。
サーベ<SAVEH>
サーベ産の絨毯は遊牧民タイプの絨毯の中では品質が高く人気があります 。 デザインの特徴は何学的なパターンです。 色使いは赤と青で美しい対照を作り、ベージュの占める部分も多く、新しいものでは緑及び青、茶色など他の色も控えめに使われます。 結びはあまりきつい方ではありません。結びは30ラージが普通で、やや柔らかい感じに仕上がっています。 様々なサイズが織られますが、ザロニムサイズが多く見られます。 縦糸は綿が普通で、横糸は 綿かウー ルです。
サーベの町。首都テヘラン<TEHRAN> の南約80kmにあり、シャーサヴァン族<SHASAVAN>の住む町として知られます。シャーサヴァン族は多くが北西 イラ ンに暮らしますが、一部は過去に中央イランへ移動し、サーベやヴェラミン<VARAMIN>で暮らしています。 「シャーサヴァン」はシャー(王)に仕える戦士を意味し、17世紀頃ペルシャの北のボーダーを守り、この名で呼ばれたと言われます。織物にはサドルバック や動物の装飾のような実用品も多くソマックやキリムも産します。


ヤラメ<Yalameh>
ヤラメはイラン国内の遊牧民由来の部族の名前、またそのヤラメ族の織る 絨毯のことを指します。ギャッベと同じ、部族もののペルシャカーペットです。ヤラメ族は、ギャッベを織るカシュガイ族、或はルリ族につながりがあるとも言 われています。 特徴は温かみを感じさせる手触りと色使い、そして幾何学的な紋様にあります、特に色彩は赤、紺、ベージュ、茶、グリーンなどと色数が豊富で、大変美しいも のです。 デザインは鈎状の紋様で縁取りされたダイヤの三連メダリオンのものなどメダリオンの数や配置にも工夫があり、多くのバリエーションがあります
アバデ<Abadeh>
アバデ は, イランの首都テヘラン<Tehran>から南へ600km強の距離、イスファハン<isfahan>とシラーズ<shiraz>の間に位置し、標高約 2,000 mの高原にある小さな町です。この地の歴史は千年を越すともいわれ、シラーズが都になって以降発展したと言われています。遊牧民カシュガイ族の夏の野営地 に近く、住民の殆どは定住化したカシュガイ族だと言われます。 アバデの絨毯の特徴は、多くは菱形のメダリオンを生命の樹のモチーフで上下に挟み、ギュル様の文様を中央とコーナーに配し、動植物や部族の様々な文様で フィールドとコーナーを埋めます。色数も多く、部族系の絨毯の中でも大変細かく賑やかな織りです。基本色は深い赤、深い紺、そしてベージュです。 カシュガイの絨毯のデザインとよく似ていますが、結び目が細かく詰まったやや堅めの仕上がりで、パイルも短か目です。他に花瓶文様のデザインも見られま す。縦糸には綿を用います。
マハラット<Mahallat>
マハッラトはテヘランから南西へ約260km、絨毯産地-集積地として 有名なアラークの近くに位置する山腹の都市。古くから栄えた町で絨毯産地としても歴史があります。温泉や石材の産地としても有名です。マハラットの絨毯は その地理的な要因から南イランの部族由来の曲線から成るモチーフが多く見られます。また、織りの細かさはさほどでもありませんがしっかりと織られ構造は強 いです。30ラージぐらいの物が普通です。
カシュマール<Kashmar>
カシュマールはイランの最も広い州、北東部のホーラサーン州の重要な都 市の1つで、かつては"タルシーズ"と呼ばれました。 地理的には首都テヘランから直線距離で東へ約600km 、ホーラサーン州の州都マシャドからの直線距離で南西へ約150kmほどの場所に位置します。この地域にはムードなど、他にも絨毯生産を活発に行う町が多 くあります。カシュマールで生産される絨毯は緻密で美しいものも多数生産され、大きなサイズの物も多く作られます。目の細かさには幅があり、30ラッジ (約7cmに30の結び目がある織りの密度を表します。)〜80ラッジと言われています。


ペルシャ絨毯イスファハン

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